第16章 新たな傷
前のブラック本丸とは違った空気の悪さだ。
闇堕ちする時って、こんな風に空気が澱むのか…
『刀剣の気配を感知できないな…。』
本丸ごと、結界で覆ってみるか。
ヒュッ!!
本丸の中から、矢が飛んできた。
『結。』
パキンっ!!
力の盾で矢を防ぐ。
…「余計な事をするな。」
『まだ、何もしておりません。』
…「立ち去れ。」
…手強い。
聞く耳持たぬってところか。
『私が一人で行く。
みんなはここで待っていて。』
和泉守「だがっ!!」
『主命です。』
こう言ってしまうと、私の刀剣は動けない。
ごめんね、みんなと一緒じゃ護れる自信がないよ。
『行ってくるね。』
堀川「主さんっ!気をつけてねっ!!」
『ん。』
笑顔を向けて、本丸の中へ踏み入れる。
『お邪魔します。』
し……ん。
静かだ。
静かすぎる。
刀剣が居るはずなのに、気配がしない。
練度が高いのだな。
こちらも、気づかれないように本丸に気を巡らせる。
…「出て行け。
我らは何人にも屈せぬ、属せぬ。」
奥の闇の中から、声がした。
『闇堕ちするおつもりか?』
…「それでもいい。」
『堕ちれば、祓われます。
傍から外れ、存在せぬものへとなってしまいます。』
すでに、千子村正は堕ちかけていて動けないようだ。
物吉貞宗は重傷…
亀甲貞宗も…意識がない。
…「構わないと言っている!」
『鶯丸さま。』
…「…何故、わかる?」
『気配…と言いましょうか。』
鶯丸「…だから、なんだ。
出て行ってくれ。
行かぬなら……。」
バッ!!
しまった!
刀剣の気配感知と、本丸の状態回復に気を取られすぎた。
背後から飛び出してきた刀剣に気づかなかった。
どんっ!!!
『ー!!!』
左の脇腹に衝撃と、熱い感覚。
刺された…な。
体の向きを刺した刀剣の方へ向ける。
『太鼓鐘…貞宗…さま……。』
太鼓鐘「帰れ…。」
瞳が紅くなりかけてる。
駄目…堕ちては駄目だ。
和泉守「主!
血の匂いがするが…主っ!!」
不穏な空気を感じたのか、和泉守が来てしまった。
『来ちゃダメって…言ったのに…。』
和泉守「主っ!
てめぇ……よくもっ!!」
『和泉守兼定!刀から手を離せっ!』
和泉守「だがっ!!」
『…従いなさい。』
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