第16章 新たな傷
堀川「兼さん、どうした…主っ!!」
『いいから…静かにして……。』
未だ刀を抜かない太鼓鐘貞宗の顔を見る。
…少し動揺してる。
まだ、大丈夫…
正気が残ってる。
『ごめんなさい…。』
そっと、太鼓鐘貞宗を抱き締める。
太鼓鐘「っ離せっ!!」
『大丈夫…
私は貴方を傷つけない…
支配も…しない…
ただ、楽になって欲しいだけ……
ここを出ましょう?
身体と…心を癒やして…これからの事を決めましょう。』
太鼓鐘「離…して……。」
まずは、穢れを払って…
手入れを。
うぅ…痛みで意識が…保たない。
『私の…本丸へ行きましょう?
燭台切…大倶利伽羅…鶴丸が…待って…ます…よ?』
太鼓鐘「あ……あぁ……。」
もう、大丈夫そうだね。
太鼓鐘貞宗を離すと、彼はストンと座り込んで泣き出した。
『和泉守…。』
和泉守「主っ!」
呼ぶと、そばに駆けつけて支えてくれた。
『翡翠に式神を…。』
和泉守「わかった。国広っ!!」
堀川「うん、兼さん。」
堀川が式神を飛ばす。
あと、一つ…
『今から…制御ピアスを外す。
終わったら…つけてくれる?』
おそらく、そこまでしか持たないと思うから。
和泉守「…わかった。」
『頼んだ…よ。』
制御ピアスを外し、力を解放する。
和泉守「!!」
刀剣の治療……
手入れ、してしまおう。
今なら重傷の手当ても出来る。
物吉貞宗…
亀甲貞宗…
千子村正…
鶯丸…
次は…
折られた刀剣の供養を…
浄化して、天に還す。
今度は…幸せになって……
よし、全部済んだ……
翡翠「お疲れさん。」
『翡翠…後を頼みます…
彼らは…悪くない。
刀解なんてしたら…呪うから…。』
翡翠「日本が沈没しちまうよ。
お前が回復するまで、何もしない。
任せておけ。」
ー俺はその為に力をつけたんだー
翡翠の言葉を最後に、意識は深い闇へと沈んでいった。
.