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月の雫

第15章 護られる事 護る事


結っていた髪を引っ張られ、一瞬息が詰まる。

?「どうせ、コイツらを手玉に取って好きなようにしてるんだろ?
髪伸ばして、女を出していればちやほやしてもらえるもんなぁ!」

髭切「貴様っ!!」

『…バカか?』

懐刀を抜き、そいつが掴んでる髪を切り捨ててやった。

髭切「月胡っ!!」

『こんなもの、切るタイミングが無かったから伸ばしてただけだ。
それに、今の言葉は私ではなく私の刀剣に対して失礼だ!
うちの刀剣はそんな、お前みたいな阿呆ではないっ!!
女だからとかで相手を見るような事はしないわっ!!
だから、お前は審神者に選定されなかったのがわからないかっ!?』

懐に入れておいた式神を翡翠に飛ばし、こいつを回収するように伝える。

『髭切、刀から手を離しなさい。
…こんな奴斬ったら、貴方が穢れてしまう。』

髭切「月胡…。」

翡翠「そうだねぇ。
刀剣が人を斬ったら、刀解だからねぇ。
…こんな、クズでも。」

『だったら、こんなのを放置するなよ。
監視しておけっ!』

翡翠「耳が痛い。
でもさ、こんな小物に構ってるほど暇でもないのよ?
さ、行くぞー。
政府の地下で、ずーっと働いてもらおうかなぁ。」

?「なんでっ…。」

翡翠「君が相手にしたのは、それだけ大変な人だったの。
…本当なら斬り捨ててやりたいくらいだ。」

おっと。
翡翠の殺気は久しぶりだな。
アイツ、終わったな。

翡翠「大変失礼した。
後日、お詫びに伺わせてもらう。」

『…わかりました。
髭切、行こう。』

髭切「……。」

髭切が私の切り落とした髪の束を、両手で大切そうに抱えてくれてる。

『髭切、ありがとう。』

髭切「綺麗な髪だったのに…。」

『あれ?短いのはお好みじゃなかった?』

髭切「そんなっ…ぶっ。」

髭切の両頬を包み込む。

『本当に、ただ伸ばしてただけなの。
…それより、不快な思いをさせてごめんなさい。』

あんな事を言う奴が居るなんて…
こりゃ、予想以上にブラック本丸っていうのがありそうだ。

髭切「月胡…。」

泣きそうな髭切が、私を抱きしめた。

髭切「身体なんて、入れ物に過ぎないの僕が一番わかってる。
…護れなくて、ごめん。
髪の一本だって、触れさせたく無かった。
護りたかった……。」



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