第14章 二人きりの時間ー三日月宗近ー
月胡を近くのベンチで待たせ、先程の店に戻って雪の結晶が揺れるピアスを買った。
この旅の思い出に、本丸へ戻ったら渡そう。
「待たせたな。」
『ううん、じゃホテルに戻ろうか。』
「あぁ。」
月胡の手を取り、歩き出す。
この旅の間は、ずっとそうしていた。
護りたいのはもちろんだが、この逢瀬を俺なりに刻んでおきたかった。
この温もりを、忘れないように。
食事と湯浴みを済ませ、眠くなるまで二人で話して。
この時間が永遠に続けばいいのに、明日で終わりか。
『明日は海沿いを少しドライブしてから、帰ろうか。』
「あぁ。」
戻りたくない…
そう、言ってしまいそうだ。
『ふぁ…。』
「もう、休むか。」
『そうだね。
…眠るのが惜しいけど。』
…今のは月胡が悪いぞ。
『おやすみ、宗近。』
「…おやすみ。」
月胡がベッドに入った後、そのベッドに潜り込んで背中から包み込む。
『宗近!?』
「何もしない。
今日だけ…
今だけ、こうして眠らせてくれ。」
『…うん。』
拒まないでくれた…
「ありがとう。」
『ん…。』
今だけは、二人きりだと感じさせてくれ。
俺だけの月胡だと…
カーテンの隙間から月明かりが差し込み、俺たちを照らす。
この世に二人しか居ないようだな。
月胡の温もりが愛しい。
眠るのが惜しい。
明日になれば、本丸へ戻る。
「明日など…来なければいいのにな。」
永遠を生きてきたのに、この旅がなによりもかけがえのない日々となった。
忘れない。
どんな事があろうと、この記憶だけは。
この温もりだけは。
どうか…
月胡も忘れないでくれ。
誰と旅に出ても、俺と過ごした時間を。
俺と交わしたこの温もりを。
「愛している…月胡を。
誰よりも、何よりも。」
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