第8章 おかえりといらっしゃい
家族が増えるのはいいなぁ。
みんなの笑顔も増える。
藤四郎兄弟はまだまだ居るし、虎徹の兄弟や国広…
うん、まだまだ楽しみだ。
おっ、今日は満月だったか…
さすがにこれ以上飲んだら、肝臓に良くないよなぁ。
コーヒーにしよう。
寝る前に飲んでも、私は眠れるし。
自室でコーヒーを淹れ、縁側に座って飲む事にした。
夜は好きだ。
静かだし、月も星も綺麗だ。
余計なものが何も無く、みんなが安心して眠れるようだし。
そうだ。
久しぶりに篠笛を吹いてみるか。
篠笛を持ち出し、縁側に立膝をついて座り、思うがままに音を奏でる。
音が夜の空気に溶けて行く。
この穏やかな夜が続きますように。
こんのすけ「良い音色でした。」
吹き終わると、こんのすけに声をかけられた。
『いらっしゃい、こんのすけ。』
こんのすけ「いつ来てもこの本丸の空気は心地いいですな。」
『うん、そうだね。』
こんのすけ「そして、刀剣男士も増え、執務も滞りなくて何よりです。」
『うん。』
こんのすけ「ですが。」
『…なにかな?』
こんのすけ「時間跳躍はほどほどになさってくださいね。
翡翠さまも心配しておりましたぞ。」
…嘘つけ。
あの人なら膝を叩いて大笑いしてるか、喜んでるわ。
『検非違使が出た。』
こんのすけ「存じております。
だからこそ、ご無理をなさらないでください。
主さまが身につけた剣術は、あくまで護身用ですからね。」
『はーい。』
こんのすけ「間違っても、自ら先陣を切って戦わぬようにっ!」
『はーい。』
こんのすけ(ダメだ、この人。聞く気ないな。)
別に戦う事が好きなんじゃない。
彼らを傷つけられるのが、我慢ならないだけ。
彼らが強いのは、分かってる。
でも、ここで指を咥えて待っているのは耐えられない。
『大丈夫だよ、こんのすけ。
私が消える訳にはいかないからね。
ここの刀剣を護れるのは、私だけなんだから。』
こんのすけ「そうですよ。」
命を捨てるような事はしないよ。
みんなが悲しむから。
そう思えるくらいに、絆は強くなった。
『さて、明日は何をしようかなぁ。』
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