第1章 ようこそ、主さま
ー月胡ー
宗近が出てから少しすると、外に気配が。
…短刀…乱・薬研・厚かな。
『どうぞ、お入りください?』
「「「えっ!?」」」
ふふっ…驚いてる。
「「「失礼しまーす…」」」
『はい。』
大方、弟達に会わせる前に見定めておこうという所だろう。
お眼鏡に叶うかな?
乱「どうしてわかったの?」
『少しだけ、敏感なんですよ。どうぞ、座って下さい。乱さん、薬研さん、厚さん。』
薬研「もう覚えてくれたのか?」
『はい。事前に翁から教えていただいたので。』
書類に目を通しながら、3人と会話する。
厚「全員覚えたのか?」
『はい。』
へー。と感心しているようだけど…
当然じゃないか。
相手は神様だ、失礼のないようにしなければ。
私なんかよりずーっと長く生きているんだし。
乱「ねえ、主さん。
三日月さんに聞いたんだけど、部屋割り確認するんでしょ?」
『はい。』
薬研「なら、俺達が案内してやるよ。」
『いいんですか?今日は自由にお過ごしいただいていいんですよ?』
厚「だから、大将を案内したいんだって!」
そんな…
『ありがとうございます、嬉しいです。
では、書類の確認が終わったらお願いします。』
乱「了解!じゃ、終わるまでまっててもいい?」
『はい。お茶とお菓子はそこの棚にありますので、召し上がってお待ちください。』
薬研「俺達には敬語、いらないぜ?たーいしょ。」
厚「そうそう。短刀には必要ないぜ。」
『いいんでしょうか?』
薬研「いいんだ。さま付けもしなくていい。仲良くしよーぜ。」
『うん。じゃ、遠慮なく。』
こうして私を受け入れようとしてくれてるんだろうな。
翁を亡くして辛いのに…
その想いに応えなければ。
翁の後任だ、当然プレッシャーはある。
だが、こうして刀剣の方が気遣ってくれているなら頑張れる。
『終わったよ。
案内、お願いします。』
乱「はーい!行こう、主さん。」
と、乱は私の手を繋いでくれた。
…温かい。
手を繋ぐなんて、いつぶりだろう。
人の温もりを感じたのは…翁が触れてくれて以来じゃないかな。
そうか…翁と同じなんだ。
刀剣達が温かい…
なんだか、嬉しいな…
乱「主さん?」
『…ううん、なんでもないよ。』
離したくない…
失いたくない…
この温もりだけは、何があっても護る。
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