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月の雫

第1章 ようこそ、主さま



『お願いできますでしょうか?』

「あい、わかった。
引き受けよう。」

『ありがとうございます。
よろしくお願いします。』

と、主は深く頭を下げた。

「こちらこそよろしく頼むぞ、月胡。」

『!はい…っ。」

おっと…
先程、拝殿で見せた微笑みとは全く違う、安心したかのような本心からの笑顔だな。
胸が高鳴る。
こんな事は初めてだな…
長く生きてきて、何代もの主と共に過ごしてきたが。
人の子にこれ程胸躍らせる日が来るとは…な。
月胡と過ごすこれからが楽しみだ。

「さて、月胡よ。
今日はこれからどうする?」

「書類と本丸の確認をします。
部屋割りや内番などの。
ですので、三日月さまは…』

「宗近。」

『えっ?』

「宗近と呼べ。敬語もいらぬ。
俺も月胡と呼ばせてもらう。」

本当に呼んでいいのか、迷っているな。
何故だか俺は…
月胡に名で呼ばれたい。

『はい、宗近。』

「うむ、素直で良い。」

『では、宗近。
何かあれば呼ぶので、好きに過ごして。
みんなにもそう伝えて。
さっきも言ったけれど、執務室は出入り自由ですから。』

「伝えよう。
では、何かあればすぐに呼べよ?」

『ありがとう。』

月胡との会話を終え、執務室を出る。
清々しい気分だ。
気持ちのいい女子なのだな、月胡は。
まだまだ隠している所があるようだが…

少しずつ見出していくのが楽しみだ。

乱「三日月さん!」

「おお、乱に薬研、厚か。」

薬研「新しい主はどうだった?」

「俺の口から語るより、自分で確かめてはどうだ?
執務室は先程申した通り、出入り自由だぞ。」

厚「本当に!?」

「あぁ、行ってみるといい。」

乱「よーし!薬研、厚!いってみよー!」

薬研「ちょっ、乱!ひっぱんなって。」

ふむ…
若者は活発で良いな。

翁。
月胡は大丈夫だぞ。
もちろん、俺達も。
皆、月胡が気に入るだろう。
なにせ、翁と同じ気配だからな。
それに、約束は守る。
安心して休まれよ。



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