第35章 かけがえのない日々の中で
みんな部屋には戻らず、広間で寝たり話したりしている。
私達も、そうする事にした。
『次郎や日本号も、今日は静かに飲んでるね。』
翡翠「呑み時を分かってんな。」
『そうね…。』
いつも、私が落ち込んだらしている時は大騒ぎして。
しっぽりと呑みたい時は、合わせてくれる。
『この時間を…私は護りたい。』
まだ、時間遡行軍は殲滅できていない。
戦いはこれからも続くけど、皆がこうして過ごせる刻を失くさない。
翡翠「護れるさ。皆も俺も居る。」
『…うん。』
翡翠「俺さ、今回の月胡のおかげで時間遡行軍関係の室長になる。」
『…そう。』
翡翠「あれ?驚かないの?」
『翡翠なら、遅かれ早かれ実力でなってたでしょ。』
翡翠「…そうかい。」
と、嬉しそうに笑って盃を合わせた。
でも、私がきっかけであったなら嬉しい。
少しでも彼の力になれたのだから。
ーothersー
そんな二人を遠くから見つめる三日月達。
髭切「…妬けちゃうなぁ。」
膝丸「今日は邪魔をしないやくそうだろ?兄者。」
髭切「だから、我慢してるんでしょ。」
そう。
今日だけは、翡翠の邪魔をしないと刀剣同士で決めていたのだ。
月胡が素直になり、翡翠には感謝をしているから。
岩融「改めて思うが、翡翠殿は良い男だな。」
石切丸「そうだね。」
黙っていれば色男だし、月胡が絡まなければまともな仕事の出来る男なのだ。
鶯丸「三日月、どうした?」
三日月「ん?」
鶯丸「先程から黙っているが…。」
三日月「…少し酔ったかな?
外の風に当たってくるか。」
鶯丸「あっ、おい…。」
三日月はそっと、広間から出て行った。
顔には出さないが、明日になれば月胡は誰かを選ぶ。
それが気になって仕方ない。
三日月(考えたところで、どうにかなる訳でもないのにな)
分かっていても、コントロール出来ない。
それは、他の皆も同じで。
酒に集中できない。
一人でいると、深みにハマる。
だから、皆広間に留まっているのだ。
三日月「明日が来て欲しいのか、そうでないのか。
己の感情なのに、なかなか厄介だな。」
月だけがその独り言を聞いていた。
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