第34章 続いてゆく道
ー月胡ー
『っくしゅんっ!!』
…誰か噂してるな?
それとも、悪口か?
ったく、どいつもこいつも辛辣だからなぁ。
入院していた時によく分かったわ。
…まぁ、それも愛情だってわかってる。
『さて。
そろそろ、本格的に足掻こうかな。』
身体にもピアスにも霊力が戻ったので、色々と試してみよう。
?「大丈夫だよ。」
えっ…
この声…は……
?「良くがんばったね、月胡。」
この、全てを包み込むような霊力は…
懐かしくて優しい声のする方へ顔を向けると、信じられない光景が。
『翁…。』
そう。
翁が立っていた。
翁「おいで、月胡。」
『はい…。』
広げた翁の胸へと飛び込む。
『迎えに…来てくれたのですね。』
翁「ちょっと、違うな。
送り届けに来たんだよ、本丸へと。」
『えっ…?』
てっきり、彼方の方へ行くのかと思った。
翁「皆の祈りが、私に届いた。」
『みんな?』
翁「月胡の刀剣男士だよ。」
翁の指が額に触れると、本丸で待つみんなの様子が流れ込んできた。
陰で泣いても、みんなの前では泣かない短刀たち。
私の部屋に来ては痕跡を探す子。
拳を握りしめ、ぐっと堪える姿。
私があげたお守りを通して祈る姿。
汗を流しながら祈祷する石切丸。
その周りには、青江・太郎・伽羅・蜂須賀・鶯丸が瞳を固く閉じて手を合わせている。
書物を読み漁る宗近・髭切・膝丸・鶴丸・長谷部。
部屋を整えてくれる乱。
必ず私の分まで膳を毎食用意してくれる光忠と歌仙。
私がどんな状態で帰ってきても対応できるように薬を整える薬研。
毎日の事を書き留めている五虎退。
朝晩、転送装置や鬼門の所へと様子を見に行く今剣と小夜。
弟達に寄り添い続ける一期・江雪・宗三・明石。
今度同じ事があっても自分達が護るんだと鍛錬を怠らない和泉守・堀川・加州・大和守・長曽祢。
光兄さんの花壇には花が沢山咲いていて。
執務室も私室も、ピカピカに磨かれている。
そして、食事はみんなが揃って摂り、規則正しい生活をしていて。
日常を守ろうとしてくれている。
みんな…
こんなに強く想ってくれてるんだ…
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