第33章 それぞれの想い
ーothersー
和泉守「あーあ。」
陸奥守「なんじゃ?和泉守。ため息なんぞついて。」
たまたま同時に執務室へと来ていた和泉守と陸奥守。
その和泉守が天井を仰いでため息をついた。
和泉守「いやなぁ…
函館に出陣した時なんだけどよぉ…。」
陸奥守「主が迎えに行ってくれた事か?」
和泉守「あぁ…。
陸奥守「それがどうかしたが?」
天井から視線を下げ、主不在の執務室机の方を見る。
和泉守「あん時、すげぇ嬉しかったんだ。
土方さんの最期を見届けて、もうどうにでもなれっ!て思ったのによ…
迎えにきてくれたんだぜ?
自分が危ねぇってのによ…。」
陸奥守「そうらしいのぅ。」
時空を越える事は、生身の人間には過酷なものなのだ。
月胡の力があったから、長時間留まれただけで耐えられるものではない。
和泉守「なのによ…
俺は迎えに行ってやれねぇんだもんなぁ…
情けねぇよ。」
陸奥守「……。」
それは陸奥守も同じ思いだ。
…いや。
この本丸の刀剣男士全員がそう思っている。
何度も救ってくれた。
溢れんばかりの愛を注いでくれた。
それなのに…
和泉守「祈る事しかできねぇんだもんなぁ。」
堀川「…他にもありますよ?兼さん。」
と。
真っ黒なオーラを纏った堀川が執務室へ和泉守を探しに来た。
陸奥守「ほっ…堀川?」
笑顔だけど目が笑っていない堀川に、陸奥守も怯えている。
堀川「むっちゃんさんは、今日非番だからね?いいんだよ。
でも、兼さんは違うよね?
僕と畑当番だよね?
なに、サボって感傷に浸ってるの?
そんな暇あるなら、仕事したら?
ねえ、どう思う?」
和泉守「すっ、すまん国広。
すっ、すぐに行く!」
堀川「当然。
…兼さんだけじゃないんだよ。」
そう、思っているのは。
堀川に和泉守が連れて行かれ、執務室に一人となった陸奥守。
陸奥守「主…早く会いたいぜよ。」
祈るくらいなら、己の手で切り開くのが信条であろう陸奥守だが…
祈って月胡が無事に帰るなら、いくらでも祈る。
そう、静かに目を閉じた。
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