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月の雫

第33章 それぞれの想い


ー膝丸ー

もうひと月、か。
こんな事にならなければ良いと思っていたのだがな。
…思ってしまったから、現実になってしまったのか。

でも、何故か…
こうなると予想していたからか。
思っていた程のダメージがない。

月胡は無事で、何があっても帰ってくる。
その気持ちが、少しも揺らぐことはない。

もちろん、会いたくて寂しい。

それでも信じて待てるのは…
修行に出たからかもしれない。
会えなくとも、間違いなく心の支えだった。
違う時空に居ても、月胡を感じられる。
それは、今も同じ。

本丸の力が衰えていないから、月胡は無事だ。
ならば、俺は俺のするべき事をして待つだけ。

今剣「膝丸さまー。」

「どうした?今剣。」

今剣「鍛錬に付き合ってもらえませんか?」

「もちろん、いいぞ。」

最近はこうして、鍛錬を申し込まれる事が多い。
皆も落ち着きを取り戻し、日常を取り戻そうと努めている。

「なかなか、良くなってきたな。」

今剣「本当ですか!?
早く主さまに見せたいですっ!!」

「そうだな。」

皆、片時も忘れない。
今の自分があるのは間違いなく、月胡のおかげなのだ。

…忘れるわけがない。

自室に戻ると、兄者が月胡の髪を出していた。
前、元審神者候補に絡まれて自ら切り落とした時の。

「兄者。」

髭切「…何故だろうね。
切り落として生を失ったはずなのに、こんなにも艶やかだなんて。」

「…それは、月胡が無事だからだろう。」

髭切「…そうだね。
だから、なんだね。」

「あぁ。」

兄者がどんな風に思っているのかは、分からない。
飄々としている兄者が、こんなにも真剣になっているのだから相当なものだとは分かる。

髭切「…一人で泣いてないかな。」

「…泣いてるだろうな。
皆に会いたい、と。」

髭切「そうだよねぇ。」

「帰ってきたら、うんと甘えさせてやろう。」

髭切「…うん。」

最強なくせに泣き虫な月胡。
早くその涙を拭ってやりたい。
苦しいと叫ぶ程に抱き締めたい。

『膝丸!』

あの声で…
呼ばれたい。

「月胡…早くあいたいぞ。」





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