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月の雫

第32章 祈りと願い


ーothers sideー

翡翠「よー。」

三日月「翡翠殿。」

三日に一度、翡翠は月胡の本丸に顔を出すようにしていた。
頼まれたのもあるが、ひょっこり戻ってきているのではないかという期待も込めて。

だが、今日も気配の欠片すら感じない。

翡翠「調子はどうだ?」

三日月「問題ない。
皆も、己のやるべき事に励んでいる。」

翡翠「それは、何より。」

だが、誰一人として月胡の事を口にしない。
万が一、不安が口を出てしまったら…現実になってしまいそうで怖かったのだ。
けれど、祈る事や思う事をやめない。
片時だって。

それは翡翠も同じだった。

翡翠「ひと月…か。」

三日月「…そうだな。」

月胡の居ない一日は、長い。
彼女が居た時は、どうしてあんなに早く時が流れたのだろう。
目まぐるしくも、充実していた。

今は、体の疲れを感じる事はあってもどこか満たされず。
ただ、時が過ぎていくだけ。

翡翠「すまない。
まだ、手がかりすら見つからない。」

三日月「こちらも、だ。」

前例がないどころか、人の手が届かぬはずの場所だ。
八咫が歪め、月胡が辿ったから開いただけの事。

八咫が去り、月胡自ら閉じたのならどうしようもない。

翡翠「アイツ次第なんだよなぁ。」

三日月「…ならば、必ずもどるさ。」

翡翠「だな。」

月胡は約束を違うことなどしない。 
何より、この本丸を愛してやまないのだから。
自力でなんとかする。

だから、信じて待つのみ。

皆、どんなに考えても結局そこへ辿り着く。

乱「だって、本丸の結界や護りがひとっつも変わらないもん。」

堀川「そうなんですよ!
何も変わってない。」

月胡に何かあれば、結界が弱まっていく。
だが、そんな気配は微塵もない。
ひと月経っても、だ。

初めこそ不安だった刀剣たちも、今は自信を持ってはっきり言える。

ー月胡は戻ってくるー

と。
前回だって、ひと月近くかかったんだ。
狭間からなんて、そうそう戻れないのは当然だろう。
今は力を蓄えていて、ひたすらその時を待っているだけなんだ。

鶴丸「だよな?主。」



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