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月の雫

第32章 祈りと願い


しん…

主の居ない執務室の空気は冷たく、無機質なものに感じた。
三日月は指先で机をなぞり…

だんっ!!!

思い切り、拳で殴りつけた。
やり場のない想いをぶつけ、そのままその場に座り込んでしまった。

ー無理矢理にでもついて行けば。
ーもっと他に方法があったのでは?

悔やんでも悔やみきれない思いが、瞳から零れ落ちる。
三日月は初めて、涙を流した。
愛しい人を想い。
自分の不甲斐なさを呪い。

三日月「何が、天下五剣だ。
一番、守りたいものも守れずに…。」

もう一度手を振り上げたが…

パシッ

膝丸「そのくらいにしておけ、三日月。」

髭切「月胡に怒られるよ。」

月胡の気配を少しでも感じたかった兄弟も、執務室へと来た。

三日月「…それでもいい。
月胡に会えるのなら怒られようが、な。」

兄弟の気持ちも同じだった。
だが…

髭切「そんな事をしても、帰ってこないよ。」

三日月「……。」

膝丸「明日からのことを決めよう。
そして、月胡が戻れる方法を探ろう。」

宗近「…そうだな。」

それが、月胡の望んだ事。
三日月に本丸を任せたのだ、疎かに出来るわけもない。

三日月(いつの間にか…逞しくなったものだ。)

一人じゃない、というのはこんなにも心強いものなのだと知った。
だからこそ、今一人であろう月胡の為に。
1秒でも早く会えるように、考えなくては。

膝丸(月胡…寂しくはないか?)

髭切(今度は何があっても、離れないからね。)

三日月(想いは常に側にあるぞ。)

各々、月胡から貰ったお守りを握りしめて祈る。
もちろん、他の刀剣達も。

討伐組は最後に見せた月胡の笑顔が消えぬ事を。
本丸組は触れた温もりを。

それぞれに想い、祈りを込める。

想いの形は違っても、大切なのは変わらない。

大丈夫。
明日からは、いつも通り笑える。
意地でもそうしてやるんだ。
月胡が悔しがって、早く帰って来るように。
何がなんでも、日常を取り戻すのだ。

ーだからー

無事でいてくれ。





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