第31章 突入
『本丸を頼む。』
そう言い、刀剣達に力を送り込んで傷を癒やし。
本丸へと送還した。
翡翠「馬鹿野郎っ!!」
最後に翡翠の声が響いた。
月胡は一瞬だけ奥歯を噛み締め、本丸との糸を断った。
八咫「月胡…月胡……。」
もう、八咫に理性は残っていない。
念を放とうとしたが、心臓と的確に貫かれて力も尽きてゆく。
月胡はピアスを外し、力を解放する。
狭間を元に戻さなくてはならない。
穢れを祓い、刀を弔い、八咫を封印する。
言葉を発する事もなく、淡々とこなして行く。
感情を押し殺し…
一つ一つを。
八咫「月胡……。」
『……。』
それが、八咫の最後だった。
月胡は温度のない瞳で、最後まで見届けた。
それが、せめてもの情なのだろう。
『さて、どうするかねぇ。』
ピアスを戻すと、ペタリと座り込んだ。
力を使い果たしたのだ。
本丸との繋がりも経ってしまった。
狭間から戻る方法など、知るはずもなく。
とりあえずは、力が回復するまで大人しくするしかないようだとため息をついた。
ーここを正常化したから、本丸の遡行群も消えただろう。
留守居役は怪我しなかったかな…
ま、翡翠が代役で治してくれるだろう。
暫くは私の力もあるし。
…翡翠も特攻組も怒ってたなぁ。
今頃、本丸組も怒ってんだろうな…
石切丸にまた、説教されるなぁ。
…帰るの、怖くなってきた。
いよいよ、愛想尽かされるかもなぁ。
…みんな、喧嘩しないで居てくれるといいなぁ。ー
思考がバラバラになる。
本当ならパニックに陥る状況なのだが、こんな所で訓練した事が生かされてしまった。
冷静すぎて、本丸の事が手に取る様に分かってしまう。
『…戻れるのかねぇ。』
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