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月の雫

第31章 突入


残糸に触れ、目を閉じて集中する。
さぁ…八咫への道よ、開け。

辺りの雰囲気が変わり、静かに目を開けると…

大典田「…なんだ、この空気は。」

鶴丸「気色悪いなんてもんじゃないな。」

二人の言う通り。
まるでざらついた舌で全身を舐められているように纏わりつく、重苦しい空気。

パンっ!!

一つ手を叩き、その空気を払拭するといくらかマシになったが…
このは八咫の土俵だ。
完全には拭い去れない…か。

ぼぅ…

両側に石灯籠が現れ、道を照らした。
真っ直ぐに奥へと伸びている。

明石「ご丁寧に道案内でっか。」

蛍丸「どうする?主。」

蛍丸の問いかけに、辺りの気配を探る。

『…まだ、何もする気はないようだ。
皆の周りに結界が貼ってあるけど、注意は怠らずに進もう。』

伽羅「あぁ。」

薬研「大将、俺を先頭にしてくれ。」

乱「なら、後ろは僕が。
短刀だからね、夜戦は任せてよ。」

『わかった、頼むよ。』

薬研「あぁ。」

乱「うん。」

みんな、初めこそここの空気に飲まれかけていたけど流石だな。
もう、普段通りだ。
それでこそ、私の刀剣。

『加州と大和守は翡翠殿の両側を。』

大和守「わかった。」

加州「任せなって。」

和泉守「なら俺は、主の前だな。」

陸奥守「なら、ワシは後ろじゃ。」

後はあまり固まらずに進む。
ここで襲う気はないのか、照らされた道には何も仕掛けられていなかった。

薬研「大将、ここで行き止まりだ。」

灯りが終わると、透明な壁が行手を阻んでいた。

『結界だ。
…これを破ったら、本格的に奴の領域に入る。
全員、抜刀。』

チャキッ…

『中はおそらく、大きな城だろう。
私は真っ先に本丸へと向かう。
薬研・乱・太鼓鐘・愛染は道を開いて。
…後は、臨機応変で。
各々に任せるよ。』

燭台切「…いいのかい?」

『戦場は皆の方が先輩でしょ?
信じてるよ、私の刀剣達。』

刀剣「「「はっ!!」」」

『では…参るっ!!』

パリンッ!!

結界が砕け散ると、中は予想通り。
でん!と三階建ての城が現れ、無数の遡行軍がうようよと。

ぐぉぉおぉぉ!!

『散れっ!!』

刀剣「「「おうっ!」」」



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