第29章 見えてきた狙い
元から膝丸が帰還したらお祝いをすると言っていたから、準備はスムーズだった。
…ていうか、私の話が終わったら準備してたし。
『翡翠。』
翡翠「んー?」
宴会が始まり、翡翠は私と呑んでいた。
『私は審神者としてトップに立つよ。
だから、翡翠は政府のトップになって。』
翡翠「…約束する。」
カチン。
盃を交わし、約束する。
歴史を、刀剣を守るんだ。
御手杵「主、呑んでくれ。」
『うん。じゃ、ご返杯。』
御手杵「いただきます。」
『ふふふ…これで、文字通り盃を交わしたね。』
御手杵「だな。」
いい笑顔。
仲間の無念も、御手杵の前の主の想いも全部私が引き受けるよ。
『幕末の緊急討伐の時も思ったんだけど…。』
翡翠「なんだ?」
『やっぱり、時間遡行軍は許せない。
何度も想いを弄んで、傷つけて。
どんな思いで彼らが…刀剣が刻んできたと思っているんだ?
それに…。』
翡翠「それに?」
『私を手に入れるためだなんて、もっと許せない。』
翡翠「月胡…。」
『今回ばかりは、何があっても引かない。絶対に。』
ぐいっと、盃を一気に呑み干す。
『まどろっこしい事してないで、直接きやがれってんだ!』
青江「主…酔ってるのかい?」
『酔ってない。
みんな、盃を持って。』
酒を満たした盃を持って、みんな立ち上がる。
『今回の任務、折れる事は許さない。
まずいと思ったら、引くこと。
自分の事を一番に考える。
…私は居ないものと思って。』
乱「主さんっ!それはっ!!」
『以上を主命とする。』
ビクッとみんなの動きが止まる。
主命と言われれば、逆らえない。
『細かい作戦は明日、考える。
大丈夫、私は強いから。』
自分に言霊をかける。
過信ではなく、奮い立たせるため。
この本丸の刀剣の為に、私は負けられない。
『乾杯っ!』
カチン!
翡翠「ずいぶんと乱暴な主だこと。」
『育て方、まちがったんじゃないの?』
翡翠「いや、上等だよ。」
カチン。
翡翠とも盃を交わす。
翡翠には、本当に感謝してるよ。
審神者にしてくれて、こんな素敵な家族に恵まれて。
みんなに、ありがとう。
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