第29章 見えてきた狙い
『私は…
私は、歴史を守る事が仕事だ。』
髭切「うん、そうだよね。」
『それは、貴方たちの大切にしている元の持ち主や背景を守りたいから。
過去があったから、今のみんなが居る。
なにより、過去がなければ今は存在しない。
その事実を曲げたり、踏み躙るなんて事は絶対に許さない。
私を手に入れるためだなんて、もってのほか。
…だから、八咫にとどめを刺すのは私だ。
誰にも譲らない。』
膝丸「月胡…。」
三日月「……。」
光世「……。」
『いいね?翡翠。』
翡翠「それが奴の本望だとしても?」
『…私はくれてやれないからな、最大の譲歩だ。』
もう、迷うことなどない。
八咫は堕ちてしまった。
…苦しんでいるのかもしれない。
だからといって、許されることでは無いが。
私が引導を渡す。
それが、人としての私の最後の仕事だ。
『もう、巻き込んでごめんなんて言わない。
どんどん巻き込むから、ごめんね!』
乱「望むところだよ!」
信濃「だな。」
明石「今更ですわ。」
岩融「任せておけ!」
みんなも、力強く頷いてくれた。
『では、これから作戦を練る。
翡翠、執務室へ。』
翡翠「わかった。」
『みんなはもう、好きにして。
まだ、決行じゃないからリラックスしてて。
いつも通りに過ごそう。』
みんなを残し、執務室へと戻った。
翡翠「強がるなよ。」
『…そんなんじゃ、ない。』
私は八咫と良い関係が築けると思っていた。
博識で力もあり、明るい人だった。
私をライバル視していても、意地悪などせずに認めてくれて…
なのに…
ある日、八咫から受け取ったお茶に媚薬が混ざられていた。
残念ながら私は、薬類の耐性訓練もしていて。
一口で分かったが、八咫の魂胆を知りたくて効いたふりをした。
八咫「月胡…これで、俺の物に…月胡の力も身体も、俺の物だ…。」
光のない曇った瞳。
欲望だけを吐く唇。
…思い出しただけで、吐きそうだ。
術で動かなくされ、服を脱がされそうになったところで術返しをして逆に捕らえた。
八咫「月胡…俺のだ…月胡は俺の物だっ!」
…狂ってる。
そうさせたのは、私なのか?
私の存在が、そうさせてしまったのか…?
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