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月の雫

第29章 見えてきた狙い


過去の自分と向き合い、仕事をこなしている間に膝丸が帰還する日を迎えた。
つまり、みんなに話す時が。
自分でも驚くほどに、冷静だった。
…他人事みたいで。

全て、自分の身に起こった事なのにね。

きっと、みんなが居てくれる安心感がそうさせてくれてるのだろう。

そんな事を思いながら、夜明け前から門の所に居る。
早く、膝丸に会いたい。

膝丸「月胡!」

『膝丸っ!!』

言うが早いか、膝丸に抱き締められた。

膝丸「すまない…辛い時に側にいなくて。」

『ううん…膝丸が過去と向き合ってるから、私も逃げ出さずにやれたんだ。
きっと、二人でそれぞれに乗り越えろって事だったんだよ。』

膝丸「…そうかもしれないな。」

『膝丸。』

膝丸「なんだ?」

『おかえりなさい。』

膝丸「ただいま、月胡。」

『良く見せて。』

膝丸「あぁ。」

膝丸から少し離れる。
神格がかなり上がってる。
自信に満ちた表情。
一回り大きくなったようにさえ、感じる。

『立派になりましたね。
改めて、膝丸。おかえりなさい。』

かしこまって言ったのは、涙が出そうなのを誤魔化す為。
無事に帰ってきてくれた事、立派にやりとげた事、会えた事。
色々な思いが言葉にならなくて、涙で溢れそうだったから。

髭切「戻ってきたんだね。」

膝丸「兄者…。」

髭切「おかえり、膝丸。」

膝丸「…ただいま。」

二人に言葉はいらないようだ。
今のやり取りで、全て理解し合えたように感じる。
敵わないな…二人の絆には。

三日月「戻ったか、膝丸。」

膝丸「あぁ。」

三日月「まずは、ゆっくり休め。
話は午後からでいいだろう?」

『そうね。
おやつの時間に話そうか。
膝丸、それまでゆっくりと休んでね。』

膝丸「わかった。」

安心した…
ちゃんと、戻ってきてくれて。

もう、大丈夫。
本丸の刀剣は全て揃った。
何も怖くない。
ちゃんと、向き合える。

『宗近。
午後の話をする時、ちゃんと隣に居てね?』

三日月「…あぁ、もちろんだ。」

『宗近が近侍で…本当に良かった。』

心からそう言えるよ。
側にいて、さりげなく導いてくれて。
私の気持ちを一番に考えてくれる。
心強い、一番の味方。



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