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月の雫

第29章 見えてきた狙い


髭切「月胡は…僕たちを大切にしてくれるね。」

『なに?いきなり。』

髭切「いや…
自分が標的にされているのに、いつだって僕たち刀剣の事ばかりだからさ。」

『…私自身より、みんなが大切だよ。
みんなが私を大切にしてくれるから、私は自分の事を顧みなくて済むの。』

なんてね。
実際、自分の優先順位はかなり低い。

『…真面目な話をするとね、自分の大切にし仕方を知らないの。
限られた人とだけ接して、自分の事は自分でして。
言い訳じゃないけど、誰も教えてくれなかった。
大人になってから、翡翠や翁に大切にしてもらったり、大切にする事を教えてもらったけど…
今でも実は、良くわかってない。』

悲観しているわけでも無く、事実なのだ。

『…私、みんなを大切に出来てる?』

髭切「これ以上ないってくらい、ね。」

『なら、良かった。』

安心した…
明日から自信を持って、みんなと接する事が出来る。

髭切「月胡は間違ってない。」

『えっ!?』

心臓が大きく脈打った。
髭切…
もしかして、御手杵が話してくれてから考えていた事を気づいていた?

私が間違ってしまったから、今回のような事になってしまったんだって。
必死に隠していたのに、気付かれた…

髭切「みんな、きっと気づいてる。
いや、ちょっと違うかな。
みんな、月胡ならそう思ってるだろうなって。」

みんなが?

髭切「弟も、ね。」

『膝丸も?
だって、まだ知らないでしょ?』

髭切「手紙で知らせた。
僕だったら、知らせて欲しいから。
大丈夫、途中で投げ出すような弟じゃないよ。
さらに、力を入れているさ。」

髭切…
やはり、侮れないなぁ。

髭切「僕は僕のやり方で。
弟は弟の、みんなもそれぞれのやり方で月胡を護ってみせる。
ずっと、一緒にいる為に。」

ずっと…一緒に。
うん。
私もずっと、一緒に居たい。
だから、人としての私を捨てる覚悟が出来た。
それが、私とみんなの幸せに繋がるように。

『私も、護るし決断もする。』

髭切「月胡…。」

『だから、今回の事を…
過去にけりをつける。
全てはそこから、始めようと思う。』

髭切「…わかった、応援するよ。」

カチン、とグラスを合わせて飲み干した。



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