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月の雫

第3章 賑やかな日々


長谷部「主はどういう経緯でこちらに?」

『気になる?』

長谷部「はい…。」

みんなの方を見ると、頷いている。

『聞いても楽しくないよ?』

大和守「教えてくれるなら、僕達は主の事を知りたいよ。」

『じゃ…。』

幼い頃に霊力を感知され、親元から離されて政府預かりとなった。
時間遡行軍に殺されてしまう前に。
隠さなければ危険なほどの霊力で、コントロール出来る様になるまでは外にも出れず接する人も限られていた。
その頃が一番安全だったかもしれない。
コントロールが出来る様になって、外に出て。
様々な人に会うようになると、女だから、子供だから、力があるから、色んな理由で近づいてくる大人がいて…
力のおかげて見抜けたり、身を守れたから良かったけど…
それが出来なかったら、どうなっていたか…

『で、最終師匠が翁だったの。
翁は優しかった…
石切丸が言ってくれたみたいに、私の味方になってくれた。
翁に会っている時だけは、素の自分でいられたんだ。
だから、悲しかった…苦しかった。』

大切な人を亡くすのは、初めてだったんだ。
損得なしに愛情を注いでくれたのも、人として大切な事を教えてくれたのも翁だったから。

『翁が亡くなってすぐ、私がこの本丸を継ぐと言われてね。
何があっても、翁が大切にしていた貴方達を守ってみせると決めて来たの。
例え、受け入れられなくても。』

長谷部「主!そんな事はっ!!」

『うん、わかってる。
こんなに温かく迎えてくれたんだもの。
ありがとう、受け入れてくれて。
私、がんばるからね!』

蜻蛉切「我々もがんばりますぞ。」

優しい瞳…
翁が優しかったから、刀剣も優しい。
愛おしい…

そうだ。

『休暇日って、食事は各々で摂るんだよね?
なら、夕食は私に用意させて。
作って置いておくから、食べてね。』

燭台切「何を作ってくれるの?」

『ビーフシチュー。知ってる?』

加州「知らない。美味しそうな名前だけど。」

『洋食なんだ。私の好きな食べ物の一つなの。
みんなにも食べてもらいたいから。』

一つずつ、私の事を知ってもらおう。
一つずつ、私たちの日々を重ねていこう。



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