第29章 見えてきた狙い
御手杵「主、いいか?」
『はい、どうぞ。』
薬研に傷の手当てをしてもらい、執務室に戻って仕事をしていたら御手杵が訪ねてきた。
御手杵「話を…したくてな。」
『大丈夫なの?無理、してない?』
御手杵「不思議なくらい、辛くない。主のお陰だな。」
そう言ってもらえて、良かった。
『座って。お茶、いれるね。』
御手杵を座らせると、宗近も来た。
…翡翠に回線を繋ぐか。
『御手杵、翡翠にも聞かせていいかな?』
御手杵「もちろん。」
端末を開き、翡翠と繋ぐ。
翡翠「おー、どうした月胡。
俺が恋しくなったか?」
『…御手杵が話してくれる。』
翡翠「わかった。画面を大きくしてくれ。」
『はい。』
ふざけていても、仕事となると切り替える。
そこは、好感が持てるな。
『では、お願いします。』
御手杵「あぁ。
…俺は別の次元の本丸に仕えていた。
そこで遠征の任務に出て、時間遡行軍に敗れ捕われた。」
翡翠「報告は上がっている。」
『その本丸は?』
翡翠「…審神者が引退した。御手杵達のいた部隊の刀剣が帰ってこない事を悔いて、な。残った刀剣は政府で預かっている。
みんな、元気にしてる。」
いい審神者だったのね。
苦しかったろうに…
御手杵「優しすぎる方だったからな。
俺達との契約が切れたから、そうかと思っていた。
…あの方もご健在か?」
翡翠「あぁ。」
御手杵「良かった…。」
だから、私との契約に問題はなかったのか。
御手杵から、審神者との繋がりは感じられなかった。
御手杵「俺達が捕らえられたのは、たまたまだったらしい。
どの審神者の部隊でも良かった感じだった。
だが、本当の狙いは…主、貴女だ。」
『…だよね。』
三日月「……。」
翡翠「…御手杵は、どうして月胡の事を知っていたんだ?」
御手杵「前の主も不正本丸に怒りを感じていて、調査が来た時に担当者に聞いたんだ。
喜んでいたよ、やっと動いてくれたと。
…会いたいとも、言っていたな。」
審神者を続けていてくれたら、会えたのかな。
『私も会ってみたかったな。』
練度も高く、しっかりしている御手杵を見ればどんな方だったのか解る。
きっと、良い関係になれたんじゃないかな…
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