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月の雫

第28章 決意


長い口づけだった。
触れるだけのものから、奪い合うようなものへ。
言葉にならない声でお互い、想いを伝え合った。
どのくらいそうしていたか…
膝丸と目を合わせた時、外は夕闇に包まれていた。

膝丸「明日、立とうと思う。」

『髭切には話したの?』

膝丸「これから話す。
…おそらく、起きただろうから。」

髭切「…正解。」

『Σ髭切!いたの!?』

部屋の入口に、髭切が寄りかかっていた。

髭切「今、来たところ。
…月胡を他の男と二人きりにさせたくないからね。」

『弟でも?』

髭切「弟だから、だよ。」

誰よりも、負けたくない。
そう言っているようだ。

髭切「で?何の話?」

膝丸「明日、修行に出る。」

髭切「…そう。」

あれ?
嫌にあっさりしてる。

髭切「その間、月胡の事は僕に任せてね。
うっかり、僕のものにしちゃっても恨まないでよ?」

膝丸「…兄者はそんな事、しない。
月胡も、不誠実な事はしない。」

おー。
これは逆に裏切れないね。

確かに、髭切はそんな真似しない。
ちゃんと、膝丸の事を思っているから。
私も…

『ちゃんと答えを出す前に、誰かのものにはならない。』

髭切「…だよね。
弟が不在の間、ちゃんと月胡を守るよ。」

膝丸「頼んだ。」

やはり、いいな。
二人の繋がり。

それなのに、私は寂しがったり不安になったり…

揺れてる場合じゃないんだ。

二人と別れ、私は執務室へ。
膝丸の支度を、私が用意したくて。
一つ一つに祈りを込めて。

三日月「どうした?月胡…旅の支度?
誰か修行へ出るのか?」

執務室に灯りがついていたから、来たのか。

『宗近。
うん、膝丸が明日。」

三日月「膝丸が…そうか…。」

『もう少しで終わるから。』

三日月「…妬けるな。」

『えー?』

三日月「月胡が想いを込めているのが、羨ましい。」

『宗近…。』

そんな、寂しそうな顔で言わないで…

三日月「意地悪を言ったな。許せよ。
では、おやすみ。」

『…おやすみなさい。」

何を言っても言い訳になりそうで、言えなかった。
確かに、今は膝丸の事でいつぱいだから。
宗近も、軽い返事なんて欲しくない。

まだまだ、だね。



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