第28章 決意
さすがに疲れたのか、お風呂に入ってベッドに寝転がった所から記憶がない。
目を覚ますと、もう夕方だった。
生活のリズムが狂うな…
膝丸「月胡、起きたか?」
『うん、どうぞ。』
膝丸が私室に訪ねてくるなんて、珍しい。
さっき、様子がおかしかったからその話かな。
膝丸「ゆっくりできたか?」
『うん。今起きた所だよ。
コーヒー、付き合ってくれる?』
膝丸「あぁ。」
パジャマのままだけど、いいかな。
カーデガンを羽織り、コーヒーメーカーをセットする。
『髭切も起きたの?』
膝丸「…そのうち、起きてくるだろう。」
『そっか。はい、どうぞ。』
膝丸「ありがとう。」
長い指でカップを持ち一口飲むと、膝丸は話し始めた。
膝丸「月胡…修行の許可をもらいたい。」
ー!!
膝丸の練度は高い。
いつ修行へ出ても良いくらいに。
『…理由は?』
膝丸「今日の事だ。
時間遡行軍の手が確実に迫って来ている。
…俺は今のままでは力不足だ。
月胡を守る為に、さらなる強さが欲しい。
俺に月胡を守らせてくれ。」
『膝丸…。』
膝丸の想いは嬉しい。
なのに、即答できない。
…寂しいんだ。
膝丸と離れたくないと思っている。
太郎の時とは全く違う。
でも。
私のために強くなろうとしてくれている。
『行かないで…。』
膝丸「月胡…。」
Σ!!
いけない。
口に出してしまった。
『嘘!
もちろん、いいよ!!
いつ出発に…する……?』
慌てる私を、膝丸が抱きしめた。
膝丸「月胡が行くなと言ってくれたのが、嬉しい。
俺と同じで…寂しいと思ってくれているのか?」
『…うん。
離れたくないって…思ってしまった…。』
膝丸「…本当は、離れたくない。
一秒たりとも、月胡を感じられぬのは耐えられない。」
『膝丸…。』
膝丸「たが、己で月胡を守りたいんだ。
月胡の事を人任せになど出来ない。
だから…少し、我慢してくれないか?
俺も、我慢して強くなってくる。」
『…うん。』
膝丸「月胡…。」
『んっ……。』
膝丸の唇が私のと重なる。
膝丸…ありがとう。
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