第27章 特別な日
ー月胡ー
朝だ。
私が生まれた日の。
私にとって誕生日とは、己の年齢をカウントするだけのもの。
めでたいと思った事がない。
祝ってもらった記憶も…なくはないが。
主に翡翠と出会ってからのもの。
あいつ、鬱陶しいくらい祝おうとしたからなぁ。
…分からなかったんだ。
誕生日を祝ってもらったら、どう反応するのが正解なのか。
くすぐったくて、照れ臭くて。
適当にお礼を言って済ませていた。
だから、誰にも教えていない。
今日もいつも通り、淡々とやる事をこなすのだ。
今日は政府にお呼び出しされてたな。
翡翠の面談が鬱陶しい。
三日月「さ、月胡。
そろそろ、時間だ。」
『はーい。』
仕方ない、行くかー。
パーン!
翡翠「お誕生日・おーめでとー!」
…火薬くさい。
出会い頭にクラッカー、しかも目の前で鳴らすか!?
『はいはい、ありがとうございます。
はい、これ。』
翡翠「もう少し祝わせてよー。」
『…まさか、その為に今日は呼び出したんじゃないでしょうね?』
翡翠「んー?仕事がついでー。」
『…それは、嫌がらせと受け取らせてもらうぞ。』
翡翠「慣れろよー。」
三日月「月胡、今日が誕生日なのか?」
『そうらしい。
翡翠、この書類なんだけど。』
翡翠「…徹底的に祝わせる気、ないんだね。」
『知ってるでしょ?
どうしていいか、分かんないんだって。』
幼い頃から祝ってもらったのなら、その日がめでたい日なんだと思えるのだろうけれど。
物心ついてから、いきない誕生日おめでとうーって言われても戸惑うばかりだよ。
適当な人に言われたなら、愛想笑いでお礼も言えるが。
気心知れている相手には、どうしたらいいのか…
翡翠「全く…甘え下手。」
『大丈夫、他のことならちゃんとみんなに甘えています。』
さっさと仕事へと話題を移す。
『ブラック本丸、無くなったみたいだね。』
翡翠「あぁ。
あと、何組か神格化した審神者もいる。」
『そう!』
想いあってそうなるなら、これほど嬉しい事はない。
刀剣に愛され、愛している審神者なんて素敵じゃないか。
『幸せになって欲しいな…。』
三日月「そうだな。」
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