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月の雫

第26章 新たな仲間


ーothersー

大典田に本丸内を案内する宗近の心中は穏やかではなかった。

三日月(また、月胡とつながりの深い刀剣が来たのだな…
喜ばしいと思う反面、独占欲を抑えるのも大変だ。)

大典田「月胡はずいぶんと努力したようだな。」

三日月「俺はこの本丸に来てからの事しか知らぬが、俺達刀剣の事となると全てにおいて努力を惜しまぬな。」

大典田「そうか…兄として喜ばしい。」

慈愛に満ちた目で語る大典田に嘘はないようだ。

大典田「安心しろ、俺は本当に妹のようにしか思っていない。」

大典田には、宗近やおそらく髭切・膝丸などの想いが伝わってしまったのだろう。
言葉や気配の中に混ざる牽制が。
さすが、天下五剣。
だからこそ、政府から月胡の護衛に任命されたのだ。

三日月「…そうか。」

一通り本丸内を案内し終えた宗近は、大典田と別れて執務室へ戻った。
すると、そこには月胡を挟んでくっついている髭切・膝丸の兄弟が。

はーっ、とため息をついて月胡から二人を引き剥がす。

三日月「まったく…油断も隙もあったもんじゃない。」

『邪魔ではなかったよ。』

三日月「いや、あれは抵抗してくれ。」

三日月(俺のために。
せめて、執務中くらいは独占させてくれても良かろう。)

宗近の気持ちを知ってか知らずか。
未だに本心の読めない月胡。
慣れてしまったとも言えるのか、刀剣達が何かしても動じない。

三日月(本当に好きな男に触れられたら…どんな反応をするのだろうな。)

未遂とはいえ、一夜を共にした宗近。
戦いで昂った時ではなく、己に欲情しての行為だったら月胡はどんな表情で、言葉で溺れるのだろうか。
甘く満たされたはずの心が、ざわつき始めた。

『宗近?』

三日月「…いや、何でもない。」

三日月(どうしてこうも、月胡の事となると余裕を無くしてしまうのか…)

制御出来ない感情が自分にもあったのだと、新鮮でありやっかいな宗近。

三日月(俺もまだまだ、だな。)

今はまだ、この甘く苦い恋情を楽しむしかない。
一番の願い、それは月胡が幸せに笑っている事。

三日月(月胡だけに辛い決断や責任は負わせぬ。)

運命を共に、ずっと。
側で見守ると決めたから。



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