第24章 二人きりの時間ー髭切ー
本当に、真っ直ぐ伝えてくれる。
疑いようのない気持ち。
髭切「ねえ、月胡。
月胡の小さい頃の話を聞かせてくれないかい?」
『あ…うん。』
答えを言わない私を気遣ってくれたのか、髭切は話題を変えた。
『記憶があるのは、5歳くらいからかな。
本丸みたいな屋敷に、限られた人と暮らしていた。
それが当たり前だったから何も不思議には思わなかったんだけど、12歳の時。
さっき行った政府施設の最上階で学ぶ事になったんだけど、かなり驚いたなぁ。』
自分のいた世界が、当たり前ではなかった事。
そして、こんなにも騒がしく、様々な思念渦巻く世界だったと。
確かに、コントロールが全く出来ない状態だったら精神が壊れてしまっていただろう。
『生活はずっと、屋敷でね。
そこに蔵があって、綺麗な刀剣が…二振り……。』
髭切「うん。」
あれ?
その二振りを…私は知っている。
古より生きてきた、美しくも強い兄弟。
あれは……
『髭切と膝丸…だったの?』
髭切「やっと、思い出してくれた。」
嘘…
あの頃に縁が結ばれていたの?
髭切「源氏の重宝として、家宝とされていたんだけど。
いつしか、蔵の中に入れられてしまってね。
おそらくは、時間遡行軍に折られない為になんだろうけど。
暗く閉ざされた蔵に月胡が来た時、光が差したんだ。
僕達をここから出してくれるのは、この子だってわかったよ。」
あの蔵は私のあそび場所だった。
珍しい物に溢れていて、居心地が良かった。
一人だったけど、一人じゃなく感じられて…
髭切「月胡が触れてくれた時、僕達の魂は覚醒したんだ。
毎日のように会いに来てくれて、蔵を改造して居心地を良くしてくれて。
…よく、泣きに来ていたよね。」
そう。
弱味を見せてはいけない、油断してはいけないと幼心に気付いていた私は涙を極力見せないように努めていて。
唯一の泣き場所はその蔵だった。
できる範囲で整頓し、力を得てからは改造をしてもらった。
髭切「ずっと、見守っていたんだよ。
…ずっと、触れたかった。
一人で泣かせたくなかったんだ。」
『うん…うん…。』
そうだ…
そうだった。
いつも、見えない何かが包んでくれていた。
『髭切と…膝丸だったのね……。』
髭切「そうだよ。」
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