第24章 二人きりの時間ー髭切ー
ちゅっ。
髭切が額に口づけた。
髭切「これくらいは、いいよね?」
『どうでしょう?』
髭切「えー!?じゃ、もっとしちゃうよ?」
『…駄目。』
髭切「雰囲気に流されてはくれないか。」
…流されそうだよ。
貴方の側は、心地いい。
髭切「少し休んだら、もう一度行く?」
『夜には花火が上がるんだけど、この部屋からなら見えるよ?』
髭切「じゃ、部屋にいようか。
少し、はしゃぎ過ぎたよね。」
『そうね。
汗を流して、ルームサービス頼む?』
髭切「そうしよう。
月胡、お先にどうぞ。」
『はーい。』
…危なかった!
髭切、誘うのが上手いって。
どこで覚えて来たのよ、まったく。
歩いている時や乗り物に乗ってる時は当然手を繋ぎ、行く先々では完璧なエスコート。
王子様がずっと側にいる気分だった。
場所に似合いすぎていて、夢の中にいるようで。
テーマパーク・マジックだな。
身支度を整えて部屋に戻ると、髭切は窓辺の椅子に座って外を眺めていた。
もう、絵画だわ。
美しすぎる。
髭切「あ、上がったのかい?」
『うん。外を見ていたの?』
髭切「うん。月胡の色んな表情を思い出しながらね。」
『…恥ずかしい。』
髭切「どれも、可愛いかったよ?」
すれ違いざまにぽん、と私の頭に触れてバスルームへと行ってしまった。
髭切って、あんなに行動がスマートだったんだ…
いや、いつでも素敵だったけど。
二人きりで見せる姿が、頼りになって安心するけどドキドキしてしまう。
初めての場所と時代なのに、動じないというか。
そんな所が、大人の魅力として私を虜にする。
…どんな過去を過ごして来たのだろうか。
数多くの修羅場を潜って来ているから、この程度のことでは動じないのかな。
辛い物だったら…嫌だな。
髭切「辛くはなかったよ。」
もう上がって来たのか、髭切が答えた。
気持ちが伝わってしまったようだ。
…って。
なんで、上半身裸なんですか!?
髭切「暑いから。」
あ、これも伝わってしまいましたか。
向かい側に座り、
髭切「僕は源氏の重宝として扱われていたからね、それ程辛くはなかったよ。
持ち主には恵まれて来たと思う。
月胡に勝る人は、いないけど。」
綺麗な瞳が真っ直ぐに私を捉える。
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