第23章 いろんな選択
言われた通り道場へ向かうと、誰かが居るようだ。
足音と木刀が空を斬る音が聞こえる。
そっと、戸口から覗くと…
和泉守「ふっ…はあっ!!」
和泉守が鍛錬していた。
汗だくな様子から、昨夜から続けているようだ。
一旦戻り、タオルと水を用意して再び道場へ。
『少し休まないと、怪我するよ。』
和泉守「主!…もう、起きたのか?」
『時間遡行軍に眠りを妨げられてね。』
和泉守「大丈夫なのか!?」
『揺さぶりをかけられただけ。なんて事ないよ。
はい、タオルと水。』
和泉守「…すまねぇ。」
顔の汗を拭い、水を一気に飲み干した。
どんだけ無茶してたのよ…
和泉守「…昨夜も、すまなかった。」
『別に?みんなが言う程、気にしてないよ。」
和泉守「いや、気にしろよ。」
『土方さんの夢を見ていたの?』
和泉守「えっ?」
『“主”って、言ってたから。』
土方さんの最期を見届けた直後だし、思い出したんじゃないかな。
和泉守「…違う。俺にとって主は、あんただけだ。」
『…なに?しごかれる夢でも見ちゃった?』
和泉守「それも、違う。
主に…月胡に触れたいと思っていたから、夢に見た。」
茶化そうと思ったが…
そう出来ない、和泉守の真剣さに息を飲んだ。
和泉守「俺だって、三日月のように常に側に居たい。
髭切たちのように、繋がりたい。」
『和泉守…。』
何を言うかと思えば…
ぺちん。
和泉守「いってっ!」
デコピンしたやった。
『確かに、宗近は近侍だから側にいる。
髭切・膝丸は過去にどここで縁が結ばれていたようで、繋がりが強いよ。
…でも、和泉守だっていつも私を助けてくれる。
頼りにしているんだよ?』
和泉守「俺を、か?」
『そうだよ。
和泉守が思っている以上に、ね。』
和泉守「主…。」
私らしく居られるのは、和泉守のお陰でもある。
もっと、自信を持って欲しい。
『ちゃんと、見てるから。』
いつだって、思ってるよ。
和泉守「…触れても…いいか?」
『…うん。』
おずおずと手を伸ばし、私の頬に触れる。
和泉守「やっと、触れられた…。」
『…そう?』
穏やかな表情で言う和泉守に、安心した。
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