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月の雫

第22章 優先


蛍丸「…だいすき。」

ずきゅん。

蛍丸「何があっても、側にいるから。
主の事、護るからね。」

『…ん。』

明石「えぇなぁ。
どれ、自分も……。」

愛染「アウトだ、明石。」

明石「えー。」

『いいよ…明石、おいで。愛染も。』

愛染「いいのかよ…。」

明石「…ほな。」

少し照れ臭そうな明石と、嬉しそうな愛染を抱き締める。

蛍丸は頭の良い子だから、今の私の感情を感じ取ってくれたのかな。
私の事なのに、自分の痛みのように共感してくれて…
だから、私はここで踏ん張っていられる。

『ありがとう、蛍丸・明石・愛染。』

私と共にある事を選んでくれて。
辛い想いをしたのに、こうして仕えてくれて。

夕食後、今日の出陣メンバーで軽く打ち上げをした。
今回のメンバーはあまり騒ぐタイプではないから、静かに呑んで解散となった。
私はなんとなく寝付けなくて、縁側で篠笛を奏でては日本酒をちびりちびりと。

髭切「雅だね。」

膝丸「月胡にそんな特技があったとは。」

そうか、前に吹いた時はこんのすけしか居なかったんだ。

『特技というか、趣味だけどね。』

膝丸「いや、特技と言ってもいいレベルだぞ。」

髭切「うん。
でも…少し憂いを含んでいるね。」

音に出ていたのかな。

『二人は眠れないの?』

髭切「それは、月胡でしょ?」

膝丸「笛の音が聞こえたので、来てみたんだ。
月胡とは思わなかったが。」

…本当は私だと気づいていて、来てくれたんでしょ?
膝丸はともかく、髭切は面倒な事はしない。

『…今回は刀剣、引き取れないなと思って。』

膝丸「助けたからには、最後まで責任を取りたい…と?」

『そう。』

髭切「それは、預かり先まで面倒を見たら十分じゃないかな。
彼らは月胡に助けを求めて、月胡は応えてくれた。
そうでしょ?」

膝丸「そこから先はまた、彼等が選択すればいいんだ。
それを尊重する事が、誠意じゃないか?」

過ぎるのはエゴ…か。
そうだね、彼等のしたいようにするしかない。
彼等だって、分かっているだろう。
すでに存在する刀剣と共には居られないと。



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