第21章 絆
ーothersー
1869年6月20日
函館・弁天台場
堀川「いよいよだね、兼さん。」
和泉守「…あぁ。」
土方歳三が持っていた和泉守兼定は、遺品として彼の実家へと送られた。
なので、和泉守は彼の最期を知らない。
ここからは、相当の覚悟が必要だろう。
任務に来ている6人は、弁天台場から離れた高台から見守っていた。
時間遡行軍は殲滅した。
今回はこれ以上の襲撃はないだろう。
純粋に歴史改変が目的だったようだ。
加州「…大丈夫かな。」
大和守「……。」
蜂須賀「見守るしか、ないだろ。」
長曽祢「アイツらは、大丈夫だ。」
開戦し、地響きや銃声・怒号が響き渡る。
刀剣達の見つめる先に、土方歳三が現れた。
和泉守「!!」
堀川「土方さん…。」
本当は、共に居たいだろう。
…護りたいだろう。
だが、自分たちがそれをしたら今の主である月胡を傷つける。
その事だけが、彼らを止めていた。
和泉守も堀川も拳を握りしめ、瞬きもせず真っ直ぐに見つめていた。
土方歳三を乗せた馬が、敵の鉄砲隊の射程距離に入る。
和泉守「…ダメだ、歳さん。」
堀川「土方さん…。」
ダーン!!
銃声が響き…
土方歳三が落馬した。
和泉守「Σっ!!!」
堀川「あっ…あぁ……。」
動かない彼を見て二人は、力なく膝を着き声もなく涙を流した。
その時…
目の前に桜吹雪が舞い、中から月胡が姿を現した。
長曽祢「主!?」
加州「主だっ!」
大和守「来てくれたの!?」
蜂須賀「主…。」
予告なしの登場に驚いたが、月胡は彼らに微笑みかけると和泉守と堀川の側へと行った。
月胡「和泉守、堀川。」
和泉守「主……。」
堀川「主さん……。」
月胡は何も言わずに、二人を抱きしめた。
初めは驚いていたが、二人はその細い肩に顔を埋めて泣いた。
自分よりも小さな月胡が…
何よりも大きく、温かかった。
そんな二人を月胡は、落ち着くまでずっと寄り添っていた。
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