第19章 新たな悩み ※
執務の空き時間に本殿へ行き、霊力や精神力の鍛錬をする。
集中しなきゃいけないのに…
今日は出来ない。
石切丸「珍しく乱れているね。」
『石切丸…どうしたの?』
石切丸「私も気の鍛錬をしようと思ってね。ご一緒しても?」
『ええ、もちろん。』
隣に石切丸が居ると、安心だ。
彼の穏やかな気に合わせよう。
私に出来るのは…
この馬鹿みたいな霊力を操り、歴史を…刀剣を護る事。
一振でも多く…
そして、私の刀剣を護る事。
それだけだ。
とてもシンプルな事じゃない。
考えるのはいいけど、悩む必要はないじゃないか。
私に足りない所は、本丸のみんなにも話して協力してもらえばいい。
石切丸「迷いは消えた?」
『うん。石切丸のおかげ。』
石切丸「それは良かった。」
と言いながら、私の手を握った。
石切丸「…いつも、私を頼ってくれたら良いのに。」
『頼ってるよ?』
石切丸「…私だけを、だよ。」
石切丸…
それは…
石切丸「…困らせてしまったかな。
じゃあ…今は、これだけ。
これだけ、許して欲しい。」
そっと手を引かれ、石切丸の胸へと導かれた。
両腕が私を包み込む。
耳に石切丸の心音が響く。
肌から温もりが伝わる。
このままでいたいと思っている自分が居る。
必死にそれを止める自分が居て…
今だけ…
今だけは、この広くて安心できる場所に居たい。
『石切丸…ありがとう…。』
石切丸「…うん。」
『…ワガママで…ごめん。』
石切丸「……うん。」
今はまだ一つの未来だけど、いつか沢山の分岐点や選択が出てくる。
その時、私はどれを選ぶのだろうか。
石切丸「そろそろ、時間じゃないかな?」
『そうだね。』
石切丸の腕が緩む。
石切丸「私のワガママをきいてくれてありがとう、月胡。」
『石切丸…。』
石切丸「ダメだったかな?名前で呼ぶのは。」
『ダメじゃないよ。』
石切丸「では、これからは月胡と呼ぶよ。」
『うん。
じゃ、執務に戻るね。』
本殿を後にして、庭をぐるりと回って頭を冷やしてから執務室へ戻る。
後で宗近と髭切・膝丸に話しておこう。
心配や不安は早く解いておかないと。
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