第17章 証
翡翠「よー、月胡。」
『…いらっしゃい。』
翡翠「間が気になるけど、初めていらっしゃいって素直に言ってくれたねぇ。」
今回、翡翠には世話になった。
私が不在の間、この本丸を見ていてくれた。
礼は尽くさねば。
翡翠「だいぶ回復したみたいだな。」
『うん。
もう、医師の診察はいらないって。
後は、筋力を戻すだけだけ。
そろそろ、仕事に戻ってもいいかな?』
翡翠「その前に。」
『なに?』
翡翠「忘れてないか?
温泉リゾート貸切慰安旅行、ご招待。」
『そうだった!!』
すっかり、忘れていた。
ご褒美に用意してくれるって言ってたんだ。
翡翠「明後日から一週間、ご招待!」
『すごくない!?』
翡翠「湯治込みだからね。
刀剣達とリフレッシュしておいで。」
『ありがとう…。』
翡翠「ん。
あ、手ぶらでいいから。
こちらで用意して、手配してある。
プールとかあるから、泳いで身体を戻せるし。
料理も極上だよー。」
『…翡翠は来ないの?』
ここまで用意してくれて、翡翠だって倍の仕事量だったはず。
私だって、恩を感じている。
翡翠「その気持ちで充分。
今回は、お前の刀剣達とゆっくりして来い。」
『ん。』
ありがとう、翡翠。
翡翠「じゃ、明後日迎えに来るから。
貸切だし、政府管轄だから服装とかいつも通りで大丈夫だからなー。」
そう言い残し、翡翠は帰って行った。
さて。
着替えてみんなに知らせに行こうかな。
寝巻きを脱いだところで…
膝丸「月胡、これからはどうす…!」
『おっと、ごめん。』
油断してた。
入口に背を向けていたから、まだましかな。
膝丸「いや、謝るのは俺の方だろ。」
『いや、お見苦しいものを。』
膝丸「……。」
『膝丸?』
どさっ。
えっ。
膝丸が…
私をベッドに押し倒した。
膝丸「…見苦しくなどない。
……これが、今回の傷か。」
『そっ、そう。』
いや、今の私は下着だけなんだけど…
『…っ。』
傷に膝丸がそっと触れると、慈しむように撫でて…
そっと、口付けた。
膝丸「この傷さえ、愛おしい。
月胡は何よりも美しい。」
『膝丸…。』
膝丸「…着替えたら、散歩に行こう。
執務室で待ってる。」
何事もなかったように、膝丸は私から離れて執務室へ出て行った。
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