第2章 審神者・始動
ー燭台切光忠ー
厨でいつものように朝食の準備をしていてら、髪をまとめて襷をかけた主が来て手伝ってくれた。
主が手伝いに来てくれるなんて思ってなかったから、嬉しい予想外な出来事だ。
ここへ来る前にもやっていたのだろう、手際がいい。
朝食が出来上がる頃には、調理に使った道具は全て片付いていたし、盛り付けも食欲が増すようなものだった。
「主は好き嫌いあるの?」
『んー、油がキツすぎるのは苦手かな。
食材の好き嫌いはないよ。』
「いいね、立派だよ。」
それなら、色んなものを食べさせてあげたいなぁ。
昨日、食事をしていて思ってけど。
所作が綺麗だし、美味しそうに食べてくれる。
この本丸に来て良かったと思って欲しいな。
それに…
あの伽羅ちゃんが打ち解けている。
多分、主が過剰に接触しようとしてないのが大きいのだろうけれど、主なのに手伝いに来てくれたのが意外だったし嬉しかったんだろう。
警戒するような感じじゃないしね。
この本丸を包む結界のように、大きくて温かい子なんだろう。
翁を亡くしてどうなる事かと思ったけど…
取り越し苦労のようだ。
乱「あ、主さんだ!
おはようございますっ!」
『おはよう、乱。』
乱「髪、結い上げてるんだね!
かわいいよー!」
『ありがとう。
乱も。今日もかわいいね。』
乱「主さん、ありがとー!大好きっ!」
そう言うと乱は主に抱きついた。
『おっと。』
驚いてはいるが、乱の頭を撫でる主の笑顔がかわいい。
…ちょっと、うらやましいな。
いや、撫でられたいんじゃなくて、俺が撫でてあげたい。
俺も主を笑顔にしてあげたい。
甘えさせてあげたいな…。
伽羅「燭台切?どうかしたのか?」
光忠「いや、なんでもないよ。
さっ、広間に運ぼうか。」
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