第58章 絶対君主には成れずとも$ 下巻1
「叔父上、分かるのですか?」
「あぁ、記録係りの友人から読み方を教わったからな。水晶が無くても読めるぞ」
叔父上の友人?
そういえば、叔父上の交友関係をあまり知らない。
「どうぞ」
「どれどれ。……これは、鶫(つぐみ)だな」
「鶫?」
「鳥の名だ」
「ただの名前ではない。お前さんの母親が心を込めて付けた名だ」
「鶫……どんな字を書くの?」
「そうさなぁ。あぁ、ならばこうしよう。義勇たちがここに戻るまでの間、鶫には儂が字を教えてやろう。どうだ?」
鱗滝の提案に少女は目を輝かせた。
「私、字を書けるようになりたい!」
「そうか、そうか。なら決まりだな。義勇、頼んだぞ」
「はい、叔父上」