第58章 絶対君主には成れずとも$ 下巻1
義勇様は本当にこの方が大好きなんだろうな。
「隣国のインフェルノに繋がるまでの何処かで水が塞き止められてしまっているらしい。かの国は古くからの友好国。何とか水を供給する算段をつけてやりたい」
「朔を連れていけば何とか……」
「私は置いてきぼりですか?」
ずっと黙っていた擬煌珠が口を開く。
「擬煌珠…」
「私は紛い物で役立たずだから?」
「違う!そんなことは……」
「結局、私の居場所なんて何処にもないっ!」
涙ぐむ擬煌珠に鱗滝がゆったりとした口調で話しかける。
「擬煌珠と言ったな」
「はい」
「それはお前さんの本当の名前じゃないだろう?さ、腕の銀輪を見せておくれ。お前の真名を教えてやろう」
鱗滝がさも簡単に答えようとするので冨岡は驚いた。