第58章 絶対君主には成れずとも$ 下巻1
「叔父上、お久し振りでございます。義勇です」
「何?」
バン!
勢いよく戸が開き、仮面の人物が飛び出してきた。
「叔父上…」
「義勇、よく無事で……そちらは?」
「今回の件で知り合った朔と擬煌珠です」
「朔と申します」
「擬煌珠です」
「その身体の核石……伝承のエディルレイドか」
朔の手の甲を見て仮面の男が唸る。
「ご存知なのですか?叔父上」
「あぁ。名乗り忘れておったな。儂は鱗滝左近次。義勇の叔父だ」
この方が義勇様の叔父上様。
「すみません。つかぬことをお聞きしますが、何故…仮面を?」
朔の質問に答えたのは鱗滝ではなく、冨岡だった。
「叔父上は極度のアガリ症なんだ」
良かった、本当に知り合いなんだわ。
「オホン。義勇…」
「すみません。差し出口を」
「いいえ、初見の相手を警戒するのは当然。朔殿は慧眼(けいがん)であらせられる」