第58章 絶対君主には成れずとも$ 下巻1
エディルレイドはモノではない。
冨岡にとっても朔はもう一部なのだ。
「そろそろ砦が見えてくるハズだ」
森林の奥深く。
滝が近く、霧がかかっている。
「あそこだ」
冨岡が指差す方へカンバダを誘導し、目的地へ向かい進んでいく。
樹齢数百年といっただろう大きな樹を迂回して進んだ先で霧が晴れた。
そこは砂漠帯からすれば別次元そのものだった。
鬱蒼と茂る樹木、独特な紋様の付いた草花、その自然に少し不釣り合いに見えるのが、砦と言うには些か小振りな見張り台。
「降りるぞ。ここからは全員歩きだ」
冨岡の案内に従って砦の下を通ろうとした時だった。
「この辺りは滑りやすいから、気を付けろ」
人形に戻った朔がバランスを崩したので、隣に居た冨岡が反射的に受け止めようとすると、擬煌珠が割って入って来て、朔が転んでしまう。
「朔!」
「すみません…」
「擬煌珠!」