第58章 絶対君主には成れずとも$ 下巻1
モヤモヤする……
「そろそろ移動するぞ」
「………」
「朔?」
冨岡はそんなやり取りを知りもせず…
「ごめんなさい、すぐに……」
「?」
朔が剣に戻る。
「良いじゃないですか。行きましょう?」
擬煌珠の物言いに少し引っ掛かりを覚えながらも、一行は出発した。
「……そういえば」
「どうかしましたか?」
「急場だったとは言え、手土産も用意出来ていないな」
「あるじゃないですか」
「は?」
「だって、朔さん。聖剣なんでしょ?きっと叔父様も喜ばれま……」
「擬煌珠」
「はい?」
「ソレ以上口を出すならお前を叔父の元に置く。朔をモノ扱いするな」
「………」
義勇様、私のこと……
あぁ、今すぐお礼を口にしたいのに……
涙が溢れてしまいそう。