第77章 咲くは朱なれど散るは白
「並の術士では泰山府君祭は行なえないはずですが……」
「泰山府君祭って何ですか?」
「……死者を甦らせる術、と聞いています」
炭治郎が困惑の表情を浮かべる。
「そんな……こと……出来る訳……」
「えぇ。でも、その術を成功させたことがある術士は、後にも先にも一人だけいます。それが安倍晴明……」
「ふるべふるべ、ゆらゆらと、ふるべ」
「このままだと、よからぬ事態になります。なるべく距離を取って、蘆屋道満に近ずかないようにして下さい!!」
道満が懐から一枚の紙片を取り出し、息を吹きかける。
『式』だ。
式は陰陽師の手足同然の存在。
時に情報収集の目となり、術者の思うがままに行動する。
厄介なのは、紙とはいえ、その紙片に術式が刻まれていれば、術者の判断で技を発動できる点だ。
「その紙に触れてはいけません!!」
「ただの紙切れだろォ。んなもん、たたっ切っちまえば、問題ねェだろ!!」
「不死川さん!!」