第72章 乞い願う、光を求めて
「俺は………白藤さんに……」
生きていて欲しい。
その為に、俺はもっと強くなって、彼女を護りたい。
『お前の望みが叶うように、私が力を貸そう』
「うぅ、がぁ……」
炭治郎の様子がおかしい事に気づいて、宇髄が白藤と舞山を背後に庇う形で距離をとる。
何だ、この気配。
まさかとは、思うが……
「竈門!」
「炭治郎、君?」
白藤の声に反応してか、炭治郎が咆哮を上げる。
「がぁあああ!!」
正気とは思えない。
これでは、まるで……
「炭治郎君……貴方、まさか鬼に……?」
「ぐるるる……」
こちらを見つめてくる炭治郎の瞳は血走っていて、まるで鬼の飢餓状態を彷彿とさせる姿だった。
何故?
禰豆子を鬼から人に戻す為に鬼殺隊に入った炭治郎が、鬼になるなんて……
信じられない……
誰もが目を見張る中、善逸だけは俯いたまま、唇を噛み締めた。
彼は知っている。
炭治郎が白藤に想いを寄せている事を。