第58章 絶対君主には成れずとも$ 下巻1
「朔、一度人形に戻れ。食事をしよう」
善逸が用意してくれたサンドイッチを頬張りながら一同が休むのは、森林帯の西の端。
「………はい」
ほんの少しふて腐れた様な朔に、水筒を差し出す。
「水は要るか?」
「ありがとうございます」
幸いここから川が近いので水の確保もできるだろう。
「あの…」
「何ですか?擬煌珠さん」
「お二人は『番』なのですか?」
「………えっと」
一番答え辛い質問だ。
「お前たちの番の定義は何だ?」
「成熟期の私にとっては、後継を繋ぐ為にも……無くてはならない人です」
朔の答えとは裏腹に。
「私は、よく分かりません。擬煌珠は所詮は紛い物。ノアズアークが能力の高いエディルレイドを人工的に作り出すために身寄りのない女たちを集め、実験を始めたんです」