第80章 家族の形$ 其の二
ぺたぺた。
「もう少しよ、頑張って」
這いつくばって進む我が子に声をかけながら、両手を広げて彼女はこちらにも笑顔を向ける。
「義勇さん、見て下さい。勇輝哉(ゆきや)が歩いてますよ」
「まだ匍匐前進だろ?」
「でもほら!ちゃんと向かって来てるんですよ!」
大興奮している白藤を落ち着かせようと声をかける。
知り合った頃が嘘のように感じられるくらい、彼女の表情は豊かになり、こうして隣で笑っている。
人として母となった彼女が自分の横にいる事が冨岡にとっては、まだどこか現実味がない。
だから、朝が来る度、彼女の寝顔を見て安堵する。
それと、冨岡は我が子が自分に似ていることをほんの少しだけ残念に思っている。
勇輝哉は小さい頃の義勇その物に思えてならないからだ。
勇輝哉を通して、冨岡は自身の過去を振り返っている様な感覚に陥る時がある。