第8章 上弦の陸
「不死川様…」
ざぁと全身の血の気が引く。
「おう、久し振りだなァ、白藤よォ」
全身がわなわなと震える。
「どうしたァ?久し振りにヤるかァ?」
不死川様は藤の花屋敷に足しげく通うお得意様の一人だ。
ただ、私はこの方との夜伽は苦手だ。
その最たる要因はこの方の性癖にある。
鬼は簡単には死なない。
だからなのか、この男は情事の際に頸を絞めたり、熱した蝋を足らしたり、とにかく嗜虐するのだ。
それと、私は彼の血に酔う。
気付いた頃には抱き潰された後なのだが…
というか、鬼が腰を痛めるってどんだけよ。
「どうしたァ?緊張してんのかァ?」
壁際に追い込まれ、腕を掴まれる。
「あ…」