第57章 絶対君主には成れずとも$ 中巻
これが最後の一撃。
「輝く光柱(こうちゅう) 怒れる矛先 『稲妻』(エクレール)」
暗雲から無数の雷が放たれる。
「「聖なる息吹(いぶき)に 満ち染まん 『神凪』(かんなぎ)」」
頭上に構えていた水球を檻のように薄く開いて稲妻を反射して打ち返す。
守りに特化したこの謌でも凌ぎきれるか……
パキパキ……
出力オーバーか?
相手の擬煌珠の体にうっすらとだが、亀裂が走っている。
朔は?
握りしめた柄(つか)から伝わってくる朔の体温。
俺の意思を感じてか、思念体に近い存在になった朔が、俺の手に自分の手を重ねる。
熱を持たない思念体の身体のはずなのに、触れられた場所が暖かくなるような感覚。
諦めるな。
心が折れない限り、謌は強化される。
防ぎきってみせる!