第57章 絶対君主には成れずとも$ 中巻
心を澄まし、朔の声に自分の声を重ねるように歌う。
「「吹きすさぶ 青嵐に 纏いし伊吹は 古(いにしえ)の……」」
剣の刃に水流が渦巻き、まるで自ら水を纏うように刀身が水に包まれる。
不思議だ。
剣を持っているはずなのに、体が軽い。
まるで自分の一部のようだ。
キィン、キィン!
刃と刃がぶつかる度に甲高い音が響く。
「吾(あ)がために…」
相手も歌を歌い始める。
だが、気づいた。
前のように、擬煌珠の歌が聞こえない。
彼女が歌っていないなら、今は無理矢理に起動させてしまっているのではないか?
望まない同契に望まない戦。
彼女の意に沿わない命令なのだとしたら、それは……