第57章 絶対君主には成れずとも$ 中巻
「コイツら……」
ノアズアークか!
「ほらね?俺の言った通りでしょ!いーーやーー!!」
善逸の汚い高音の叫びが響く。
前回と違うのはこちらが戦闘前に同契しているという時間的なアドバンテージだけ。
とはいえ、相手もこちらを包囲したと同時に同契を完了させたらしい。
彼等が使用している擬煌珠(フィロ)は前回同様に雷だ。
「ん?」
「どうした?」
「お兄さん、アイツらやっつけて」
「は?」
「いいから、彼女を救ってやって」
確信はない。
俺は音しか聞けないから。
でも、分かった。
いや、だから気付けた。
ノアズアークに使われている擬煌珠(フィロ)と呼ばれる彼女の心の声が……
助けて欲しいと叫んでいる。
善逸の言わんとしていることが、冨岡には分からない。
どういう意味だ?
だが、とりあえず、戦うしか道は無いようだ。
チャキッ。
剣を構え、相手との距離をとる。