第57章 絶対君主には成れずとも$ 中巻
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あれ?
「あ、お姉さん。目が覚めた?」
誰?義勇様は?
私、さっきまで路地で……
思い出せない……
目の前に居る明るい髪の少年は一体誰なのだろう?
「あの……」
「ちょっと待っててねー、お兄さん。お姉さん起きたよ」
スッ。
「朔、気分はどうだ?」
少年と共に訪れた冨岡の姿に朔は安堵した。
「義勇様…」
「お兄さん、変わった名前だね。王子様みたいだ」
ギクリ。
「ま、お兄さんみたいな愛想ない人が王子様なわけないかー」
失敬な。
「あの、義勇様。そちらの……」
「あぁ、俺。我妻善逸。武器商人なんだー、よろしくね」
「善逸君?」
「にしても、お兄さんも罪な人だね。職を探すより恋人が先って……」
「恋人?」
誰と誰が…?