第57章 絶対君主には成れずとも$ 中巻
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「………」
「義勇様?」
極力人通りが多い場所を目立たぬように歩いていたのだが、女連れのためか跡をつけられているようだ。
「どうやら、つけられているようだ」
「?」
「振り向くな。前だけ見ていろ」
冨岡との距離が近くなって、朔がほんの少し動揺する。
私、汗臭くないかな?
義勇様の顔、近い…///
どうしよう、変なこと考えちゃいけないのに、同契した時のあの一体感が忘れられなくて……
体の奥が反応するように、鼓動も自然と早くなる。
「朔」
「……はい///」
名を呼ばれるだけで鼓動が早くなるのは、おかしいのではないかと思うくらいに、朔の心は色めき立っていた。