第57章 絶対君主には成れずとも$ 中巻
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二階に戻ると、朔が小窓から月を眺めていた。
「朔?」
「義勇様、百合さんは……どうでしたか?」
「落ち着いたようだ」
「そうですか」
「何をしていたんだ?」
「月を……見ていました」
「月?」
「私の一属は月の満ち欠けに力が作用するのです。満月に成れば力が増し、反対に新月に成れば力が半減します。なので、義勇様から頂いた『朔』という名前は私そのものなのです」
月の満ち欠けに水……
「義勇様、貴方はどちらに行かれますか?」
「?」
質問の意図を汲みかねていると…
「私を伴い、王宮に戻りますか?それともこのまま流浪の旅に出ますか?」
「朔……」