第57章 絶対君主には成れずとも$ 中巻
俺は自分の羽織っていた外套(がいとう)を百合に着せることにした。
「…………義勇、さん」
百合の涙はいつの間にか止まっていた。
「義勇さんは…いつか、ここを、出てしまうんですよね?」
どう答えるべきか迷うも、結局俺は真実を口にした。
「………ああ。それがどうかしたか?」
「居なく……ならないで、……欲しいんです」
彼女は俺の外套を握り締め、揺れる瞳をこちらに向ける。
「すまないが、それはできない」
本当のことだ。
俺には王宮に妻が居て、それに……
「義勇さん?」
「俺は…」
言葉が出なかった。
なんて声をかけるべきか……