第57章 絶対君主には成れずとも$ 中巻
百合の泣きすぎて赤くなった目尻を指で拭ってやる。
「不思議……義勇、さんは怖くない…」
体の震えは止まっていないところから見て、厳密には男性が怖いのだろう。
特に警官達や店番の体格の良い男達は怖いのだろう。
俺は鍛えているとはいえ、細身なのでその対象からは少し外れるのだろう、と思う。
百合は何も言わない。
頭一つ分低い百合の頭をポンポンと撫でてやると、彼女の目からぽろぽろとまた涙が零れ始めた。
自分が泣かせてしまったと戸惑っていると、百合が言った。
「手を、握って下さい…」
手?
言われた通りに彼女の手を握ってやると、その手は冷たかった。
余程、怖かったのだろう。
よく見れば、手首に手痕が着いているし、衣装も破れたままだ。